お知らせ
中央防衛セミナー
令和3年度中央防衛セミナー(第48回)
『中国の空間認識と地域政策:「一帯一路」構想と世界戦略』
『バイデン政権下の日米関係』
隊友会主催による通算48回目となる令和3年度中央防衛セミナー(協賛:自衛隊家族会、日本郷友連盟、自衛隊援護協会、防衛弘済会、後援:防衛省)が、「インド太平洋地域における安全保障環境とわが国の選択/米国および中国の安全保障政策」をテーマに、10月26日、新宿の損害保険ジャパン(株)本社ビル大講堂で開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、隊友会本部役員、協賛4団体特別会員等約45名の限定した聴講者を前にしての講演会開催となったが、今年度は、新たにYouTubeでのLIVE配信を行うこととした。
折木理事長の開講挨拶に続き、東京大学大学院総合文化研究科教授の川島真氏が『中国の空間認識と地域政策:一帯一路」構想と世界戦略』と題して講演した。

冒頭「2022年9月の習近平国家首席の人事(党主席又は3期目)問題や最近の発言を考慮すると、台湾有事の危機は高まってはいない」との認識から開始され、前半は、中国は台湾問題解決を2049年をターゲットに設定している、中国の地域政策の転換点は1990年代の国境問題解決と東アジア諸国との外交関係構築にありこれが一帯一路への道となった、一帯一路は経済施策の他に沿岸部とパイプラインの保護という別の側面があり、このためジブチに基地を建設している、などの興味深い解説により進行した。
後半は、「韜光養晦(とうこうようかい)」(注)をキーワードとし、日本で短期政権が続いていた2009年前後に中国は方針転換をした、その流れの先に習近平政権がある、その証明として習首席は「韜光養晦」を一度も発言していない、米中対等の「新型国際関係」は中国語のニュアンスの関係で米国の対応が遅れた、などについて解説、中国にとっての危機について述べ講演を締めくくった。
次に同志社大学法学部教授の村田晃嗣氏が『バイデン政権下の日米関係』と題して講演した。

冒頭、今年8月の日米政権に関わる2つの衝撃=「カブール陥落と横浜市長選」について述べた後、岸田政権について、衆議院選挙の行方、参議院選挙後のねじれ国会の可能性、長期政権後の短期政権サイクル、などについて言及した。
次にバイデン政権の内政について、米国内部での政治対立、バイデン再選とハリス副大統領への風圧、などの興味深いエピソードを交えて進行した。
後半はバイデン政権の対中政策について、GDPと人口に関する2020年代問題や米中対立の各種シナリオを紹介し、「QUADの中の日本は、東西冷戦時の西独の覚悟と英国の知恵を持たなければ米中の狭間で十分な役割を果たすことができない」など、日本の役割について述べ、講演を締めくくった。

本セミナーは11月5日からYouTubeで無料配信されている。興味のある方は、検索サイトで「公益社団法人隊友会-YouTube」と検索すると昨年度の防衛セミナーを含めて視聴できる。なお、防衛セミナー講演集の「防衛開眼」は、昨年度をもって発刊を修了した。
(注)鄧小平氏が強調した「才能を隠して、内に力を蓄える」という中国の外交・安保の方針。